被告五二名の民事訴訟と登記手続事件
2009年12月24日
- 事件の発端
依頼者の自宅にかなり近い土地で、先々代、先代、現在と使用占有してきていて問題が生じたことがない土地について、その一部が、県道拡張予定地にかかることになり、また、子どもたちの住宅用敷地としても使用したいため、権利関係を明確にする必要が生じた。
当初、当然先々代、先代と続いた自宅近くの土地ということであり、自宅については、先々代からの家督相続をしており、先代からの相続登記は受けていたため、この土地は、単純な相続登記漏れかとも考えられた(家督相続は旧民法上の制度で、基本的に、被家督相続人の最年長男子である子が最優先順位で、その被家督相続人の財産を、包括的に相続するものとされた相続制度。他の兄弟姉妹には、基本的にその相続権はなかった)。
しかし、資料確認をしてみると、先々代が、その弟に生前中に贈与していて、当代の依頼者であるご本人には、その相続権はないことがわかった。
しかし一方、ご本人は、その先代からその自宅に居住し、先代とともに同じ仕事に従事し、本件対象土地にも一時居住するなど、先代から当然自分が相続して所有しているものとして、先代が亡くなった後から数えても、二〇年以上も前から占有使用していた。
そうすると、事実関係として、現地写真の状況からだけでも、ご本人の占有使用の開始当初は、先代の亡くなった時であり、かなり明確な反対証拠となる何かが出てこない限り、ご本人はその土地を、民法の規定に基づいて、「その占有の当初にさかのぼって」時効取得しているものと解して、差し支えないと判断された。
- 権利関係調査と民事訴訟の提起の検討
委託を受けて、先々代の、すでに亡くなられていた弟さんの相続人を、住民票や戸籍、除籍を手がかりに調査した結果、外国に移住して居住地や生死も不明な方を含めて、五二名になることが、二年程度を要して公文書上確認できた。
この方たち全員から、ご本人の時効取得を認めてもらい、時効取得による所有権移転登記の必要書類をいただくことができれば、民事訴訟手続はとらずに登記をすることが可能である。
しかし、ご本人は、当然その大多数の方については、面識はおろか、名前さえ知らない。
そうすれば、事実上、民事訴訟手続をとり、時効取得による所有権移転登記請求の中立を、五二名の相手方に対して行い、前述した事実関係とその証拠資料を裁判所で確認してもらい、「勝訴」判決に基づいて、ご本人名義への所有権移転登記申請をすることにせざるを得ない。
特別の事情がない限り、裁判所に認められるものと考えられた。
- 民事訴訟の提起と経過
最も問題になった、外国へ移住し、行方不明の相続人については、裁判所からの書類の「送達」について、その外国の領事館に調査の嘱託を裁判所から行ってもらい、都合二年程度経過の後、「公示送達(相手方行方不明の確認ができる場合に、裁判所に公示して一定期間後訴訟書類が送達されたとする制度)」によって送達がされ、その後、ご本人が裁判所の期日に出席し、事実関係について裁判官から数点聞かれた後、判決期日が指定され、事件取組開始から、五年目に、勝訴判決がもらえる予定となった。
- 解 決
最終的に、判決の送達手続にさらに、確か一年程度かかった後確定し、確定したことの証明(「確定証明書」)を取り寄せ、それを判決に添えて、所有権移転登記を行い、最終的に解決したのだが、依頼を受けてから七年が経過していた。



