司法書士・行政書士小川貴彦事務所

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不在者財産管理人

2010年06月15日

  • 相続人が音信途絶である場合に 利用

 不動産の相続や売却等で、行方不明のAが含まれていて処分が滞ってしまう場合、不在者財産管理人制度を利用することができる。
 私の事務所に10年ほど前に相続登記の依頼にこられた60歳代の女性には子がなく、被相続人である失の兄弟が相続放棄するので、夫名義の家屋敷は自分か単独で相続したいとの話であった。配偶者は常に相続人であるが、子がなく両親も他界しているこの場合は、兄弟姉妹が共同相続人となる。
 老婦人に夫の兄弟の様子をうかがうと、全部で九人だが、末の妹が米国人と結婚して平成二年頃から音信途絶であるらしい。「あの子はいつも勝手なことをして、手紙一つ寄越さない。他の兄弟は相続に口を挟まないので、妹はいないものと無視して手続を進めてください」と依頼者は苛立っていた。
 義妹の推定相続分は36分の1だが、一人でも協議に加わらなければ希望どおりの単独所有にはならない。音信途絶だけでは死亡とはいえず、依頼どおりに妹を無視することはできない。この場合、家庭裁判所の不在者財産管理制度を利用することとした。従来の住所またぱ居所を去った者は不在者と呼ばれる。不在者の推定相続分を管理すべき財産として、家庭裁判所に財産管理人を選任してもらい、遺産分割協議(権限外行為)の許可がとれれば障害がなくなるだろう、というわけである。
 依頼者に法律の仕組を理解してもらい、不在者財産管理人の選任申立につき了解してもらうのは大変だった。管理人には、「動ける」ことが買われて、私がなることとなった。気がつけば、被相続人の両祖父母まで戸籍をさかのぼり、親族に事情を書いた書面を送り、保管している手紙などを借り受けるなどの準備いっさいを受け持つことになっていた。
 申立後の手続は順調に進んでいった。私を不在者財産管理人とする審判に次ぎ、権限外行為の許可も出て、遺産分割協議を行った。被相続人の不動産は依頼者が単独取得し、依頼者は固有の資産より不在者のために推定相続分相当額を拠出して管理人が預貯金として保管するという内容である。


  • 失踪宣告の申立も行う

 しかし、これで一件落着ではない。分割でできた預貯金の行方を依頼者が心配しているので、音信
途絶となってから七年が経過したこともあり、失踪宣告の中立をした。このままでは預貯金は行き所
がなくなるからである。失踪宣告が認められれば、不在者が死亡したものとみなされ預貯金が相続さ
れる。失踪宣告の要件は、不在者の生死が七年間以上わからないことであり、管理人である私が申立人である。海外移住者の場合、管轄は東京家庭裁判所になる。申立後に調査官との面接があったが、不在者の生死、居所を確かめようとする姿勢が強かった。すでに出入国記録の照会を終えているようであり、事情聴取も丁寧に行われた。また、外務省で海外移住者の所在照会を行ってほしいとも要請された。海外に在留する日本国籍を有する者で、在留都市等の名が特定できる場合に、当該都市等を管轄する在外公館に調査をしてもらう制度だそうだ。その調査結果を失踪宣告の判断にも利用しようというわけである。
 同照会の中込人は三親等内の親族にお願いし、一年後に失踪宣告の決定書が送付されてきて、審判確定後は戸籍法上の「失踪宣告の裁判確定」の旨の届出を行った。財産は地元の家庭裁判所の指示に従い、適切な処理をして終結。最初の相談から三年が経過していた。
 これらの手続をするうえで注意したいのは、関係者の心情への配慮である。冒頭の老婦人は最後まで預貯金を気にしていた。外務省の所在照会で申込人になっていただいた方は、不在者と面識のない人だった。関係が近く、思い出がたくさんある人はその分、戸籍上とはいえ、死亡と見なす手続に対しては協力し難いようである。

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