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「贈与する」との遺言書

2010年04月15日

  • はじめに

 先日、遺言による登記の依頼を受けた。自筆証書遺言(検認手続済)であった。遺言書によれば、亡父から、長男(依頼者)と次男に対し、それぞれ、特定の土地、建物、預金、有価証券、動産を別々に「贈与する」という内容であった。土地は、30筆ほどあり、うち数筆は、農地しかも市街化調整区域内であった。遺言執行者ぱ、定められていない。法定相続人は、妻、長男および次男であるが、次男が亡父に先立ち死亡しているため、その子三名が代襲相続人となっている。

  • 「贈与する」をどう考えるか

 文言上は、死因贈与が思い浮かぶ。死因贈与は、始期付贈与の一種であり、人の死はいつか必ず訪れることであるため、条件付ではなく始期付と考えられている。しかし、贈与契約は当事者の合意により成立する法律行為であり、本件の場合、亡父の生前に始期付契
約が成立しているとは考えにくい。そこで、この場合、遺言者が遺言により財産の全部または一部を他に譲渡する遺贈と解すべきである。登記実務の先例でも「共同相続人の各々に、相続財産の一部をそれぞれ贈与する旨の記載のある遺言書に基づく所有権移転登記の登記原因は遺贈とする」としている。

  • 農地の遺贈

 本件では、包括遺贈ではなく特定の財産を譲渡する特定遺贈であるため、市街化調整区域内の農地については、登記手続前に、農地法所定の三条許可(市街化区域内は届出)を受ける必要がある。

 市街化調整区域内の農地は、1.市街化を予定していない、2.原則として建物の建設ができない、3.農地として継続使用することを予定している土地であり、所有権移転、賃借権設定等の際には、農業委員会等の所定の許可が効力発生要件となっている。

 なお、相続および包括遺贈の場合は、被相続人の権利義務いっさいを包括承継するため、売買、贈与等の特定承継の場合とは異なり、農地法所定の許可は不要である。

●登記申請手続

 ところで、遺贈と相続の登記申請手続には、次の違いがある。
 遺贈では、遺言者相続人(または遺言執行者)と受遺者との共同申請となり、遺言者側の印鑑証明書、登記済証等の添付が必要となる。相続においては、具体的相続人の単独申請により、相続証明書の添付が必要となる。

 登録免許税率は、不動産評価額に対し、遺贈が1000分の20、相続が1000分の4であるため双方の間には大きな差がある。

●遺贈と相続税

 また、相続税法上は、相続、遺贈、死因贈与、相続時精算課税に係る贈与が、同法の適用対象となるため、遺贈の場合にも相続税を納付する必要がある。

 なお、財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族(代襲相続人を含む)および配偶者以外の人である場合は、相続税額が20%加算となる。

●現実的な処理方法の選択
 
 本件においては、遺贈による登記手続を選択した場合、前記のとおり、事務処理上の負担および経費の負担がそれなりに必要となる。この方法に対し、相続による登記手続が可能であれば、事務量および手続費用が、軽減する。このような負担を相続人に課すことは、亡父の本意ではなかろう。

 そこで、依頼者に対し、「法定相続人全員による遺産分割協議をすることが可能か」と尋ねたところ、親戚付き合いを普通にしており、事情を話せば遺言書どおりの内容で遺産分割協議をすることはできるとのことであった。

 なお、遺言執行者がある場合には、相続人が、相続財産にてきした処分行為が、無効となることがあるため注意が必要である。

 以上の事情により、本件は、遺産分割協議書を作成し、相続による所有権移転登記手続として処理された。

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