本人の確認、意思の確認
2010年05月14日
- 司法書士の立会業務
通常、不動産売買の取引は、売主からの登記に必要な書類と買主が支払う売買代金を交換する形で行われる。私たち司法書士は、その決済の場に立ち会い、登記手続に必要な書類等の確認をする。最近はこだわらない人も増えたが、やはり、大安吉日が多く、複数の関係者が一同に会することが多いため、司法書士事務所、仲介不動産業者事務所、金融機関等で行われる。司法書士は売主・買主両当事者に登記手続の説明をし、本人の確認、意思の確認を行う。そして署名押印や必要な書類を受け取る。すべての書類が整っていることを確認し、その旨を当事者・仲介業者・融資する金融機関に告げる。この確認は絶対にミスが許されない。「すべての書類は整っています。必要な確認も終わりました」。司法書士のその言葉を待って、買主は売主に売買代金を支払うことになる。司法書士の緊張の一瞬である。
先日、印鑑証明書の偽造を見破り、不正な取引を未然に防いだ司法書士の話を聞いた。その司法書士は、印鑑証明書が変だと思ったのではなく、売主の挙動が不審だったため印鑑証明書の番号から発行した役場に真偽を確認したそうである。このような事件は万に一つかもしれない。が、その万に一つの不正取引を防ぐために、司法書士は、立会においていろいろな確認をする。ただ買主のためだけではない。その後その登記を信頼して取引をする人々のため、でもある。
数十年前なら登記に必要な書類の確認だけをするという司法書士もいただろう。しかし、現在の司法書士は、「人」「物」「意思」の確認をしたうえで書類の確認をする。登記の依頼人がその人本人であるかの確認、その人の意思の確認、そして登記原因の確認である。だから確認する書類も単に登記中請に必要なものだけではなく、登記の真実性を確保するという司法書士の職責を果たすため、また権利関係等の把握に努めると定められた司法書士倫理から求めるものもある。
- 本人確認
本人確認は、面識のない当事者の場合、運転免許証等の写真付の身分証明書で行う。大会社等の取引で会社を代表する者の本人確認ができない場合、業務権限を与えられた者と面談し、その者の本人確認、その者の業務権限を確認する。その必要性を説明し、和やかな雰囲気づくりを心がけるが、時には、「疑っているのか」と怒られることもある。それは仕方がない。何でも信用していたら職責は果たせない。
- 本人の意思、登記原因の確認
さらに、本人の意思、登記原因の確認である。犯罪行為のような不正な取引でなくても当事者が誤解している場合もある。この確認でも、余計なお世話だ、と不愉快に思われることもあるのだが、司法書士には、権利関係を把握する義務、問題のある取引の場合説明義務がある。どの程度まで、というのが難しいところなのだが、個々の取引の内容、当事者の立場から判断する。
- 登記原因証明情報の作成
そして登記原因証明情報の作成だ。平成16年の不動産登記法改正で、登記原因を証明する情報が登記手続に必要となった。売買では多くの場合、これを司法書士が作成する。当事者、売買物件、売買の事実、許可や第三者の承諾が必要な場合はそれらの経緯を書面にする。そして、司法書士が売買代金の授受を確認したこと、売買契約書の写し等の保管している書類、立会の場所、同席者等を記入し、司法書士も押印する。すべて後日の紛争防止のためである。
登記事件の受託において、本人確認、本人の意思の確認、登記原因の確認は、司法書士にとって最も重要な職務である。運転免許証や売買契約書など、登記に不要なものまで確認するのか、と思われることもあるだろうが、ご理解とご協力をお願いしたい。



