司法書士・行政書士小川貴彦事務所

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コラム

遺言と執行

2011年02月15日

  • はじめに

 最近、遺言に関する相談が増えつつある。神奈川県司法書士協同組合でも、「司法書士相続・遺言センター」を運営しているが、おそらくその効果というよりも、一般の方の意識の変化からくるものなのだと感じている。関連して、遺言執行事務を依頼されることもあったので、ここでは遺言の活用と執行者について述べる。

  • 遺言の活用

 相続をめぐっては、相続人間で深刻な葛藤の原因になることもある。戦前は家督相続だったから、長男子が全財産を相続する代わりに親族の面倒をみるスタイルだったが、戦後は遺産相続になった。妻と子供が共同相続人となり、子供間は均等相続であるから、言い方を換えれば、二男、三男にも法的主張が許されるようになったわけである。ただ、これが葛藤を生む一つの原因となっているらしい。このほかに、一般にあげられるのが遺産額の高額化である。価値ある資産に興味を惹かれるのは人情だろう。戦後日本は世界有数の経済大国となった。また、土地が遺産の主要財産の場合に分割が容易でないこと、遺産が事業用財産や農業用地であった場合に細分化を嫌うこと、会社オーナーの株式である場合にも事業承継を円滑に行いたいといったことも、原因の一つになっている。

 人の歩みは個々に違う。家庭の事情も異なるだろう。また、内縁の妻に相続権はない。子供のいない夫婦の場合、配偶者と共同相続人になるのは被相続人の兄弟である。子供同士でも学資や事業資金に多額の出費をしてもらった子供もいれば、特に何もしてもらわなかった子供もいる。このような事情をくむことなく、民法の規定を形式的にあてはめてしまうと、不都合な事態も心配となりかねない。

 そこで、自分の財産を死後に自分の意思で自由に処分しようというのが遺言である。家庭の事情を考え、さまざまな配慮をして、生きているうちに、自分の財産をどのように処分するか指定しておこうというものであるが、相続の相談に来られる人の中に、稀におやと思う誤解をされている例がみられる。それは、相続の問題は民法の条文や遺産分割協議が基本で、遺言が例外だと思いこまれているような場合である。本来は逆で、遺言に基づき行われるのが基本なのである。遺留分減殺制度はあるものの、難しそうな法律の条文に書いてあるから、その法文のとおりにしなくてはならないかというと、必ずしもそうではない。

 遺言をすることによって、かえってトラブルを招き寄せてしまうのではないかと躊躇されている人もいるようである。しかし、それは極端な内容だからかもしれない。三人も子供がいるのに、うち一人にだけ全財産を与え、ほかの子供には何もやらないなどと決めてしまえば、トラブルになるのは当然である。家族の実情にあわせた、柔軟な遺言を作成すれば、火種にならないのではないだろうか。

  • 遺言執行者

 最後に、遺言執行者についてであるが、遺言の内容が相続分の指定や遺産分割の禁止に限られれば問題はないのだが、財産移転を伴う場合等には遺言内容を実現してくれる機関が必要となる。たとえば、相続人以外の者に対して遺産を取得させる遺贈の場合は、そのままでは相続人が協力しなければ、画に描いた餅にすぎない。見方を変えれば、自分はもらえないのに他人に財産を移転することに汗をかくことを相続人に求めるのは酷かもしれない。法制度としては、相続人の代理人の立場で、遺言書の内容を具体化する機関として遺言執行者が用意されている。遺言書の中で指定されていなければ、家庭裁判所が選任してくれる。実際に遺言執行事務をやってみたが、金融機関は概ね好意的で、財産の名義書換等は順調に行えた。費用も裁判所が決めてくれるので頭を悩ます必要もなかったのである。

 自筆証書でも公正証書でも、遺言をもっと活用すべきだろう。

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