難しいマイホーム購入
2009年08月27日
- はじめに
過日、知人の息子さんから、マイホームを買うので、登記の連絡を受けた。
分譲会社から一戸建の建売物件を4000万円で購入するため二ヵ月前に売買契約をし、手付金300万円を支払った。銀行から4000万円を借りる予定である。建物は九割方できているが、分譲会社が経営破綻した。会社は、残金を払ってもらえば、建物を完成し引き渡すという。銀行は土地に担保が付いているので、抹消登記手続をしてもらわないと融資できない、との話であった。
- 相談者の事情
相談者は運送会社に勤務しており、40歳で年収400万円、専業主婦の妻と子供二人がいる。親からの資金援助は受けない。子供が通う幼稚園の近くの建売物件であり、夫婦共に気に入ったのでぜひ買いたいとのことである。
- 名義書換手続
建売の場合、建物は買主名義で建物表題登記手続、所有権保存登記手続をする。土地については、担保権等制限物権を消したうえで、買主へ所有権移転登記手続をする。そして、銀行の住宅ローンを担保するため土地および建物に抵当権設定登記手続をする。今回の場合は、分譲会社名義の土地に銀行担保(債権額1億4000万円)が付いていたためこれを抹消登記することが必要となる。
- 資金計画に問題ないか
住宅ローンを利用して、マイホームを購入する場合、返済可能な借入額は、一般に年収の五倍から六倍と考えられる。
ところが、本件では、年収の10倍の借入を予定している。
常識的には、無謀な資金計画といわざるを得ない。35年の返済期間中、勤務先会社の倒産、給与所得の大幅減、本人の病気、家族の病気等予期しない出来事に遭遇することもある。当初3年間は、金利が1%くらいに据え置いてあるが、4年目以降は3%くらいになると思われる。月々返済額は、当初12万円程度であるが、4年目以降は、月18万円くらいとなり、返済していくことが相当厳しくなる。子供が成長するにつれ、教育費、学費の負担も増える。マイホームの保有・維持管理費もかかる。破綻会社から家を買うと今後の手直し、修繕等もうまく進まないことも考えられる。
本人に対し、以上の説明をし、「奥さんと話し合い、再考したほうがよい」旨を伝えた。
本人の両親も同席していたが、私と同意見であった。
- 再度の面談
一週間後、再度相談したいとのことで、話を聞いてみると、妻ともよく相談したが、大変なことは承知のうえで、やはり購入したいという。私は、人生の先輩として、不動産取引実務の専門家として、前回詳しく助言したつもりであったが、相手に十分伝わっていなかったことに落胆した。
再度、無謀な借入であることを説明した。本人は、むっとした表情をする。それでも、伝えるべきことは、伝えた。
- 分譲会社のセールストーク
家賃と同程度の金額を支払えばマイホームが買える。家賃を払い続けても、建物は自分のものにならない。マイホームを買えば、土地建物が、自分のものになる。どちらが得か、賢いか。
3、40歳代のマイホーム購入予定者の中には、セールストークを鵜呑みにして、リスクに対する情報能力が不十分なまま、無謀な判断をしてしまう人が少なくない。
- 結 論
本人は、最終的には、完全な所有権移転を受けられなければ、物件購入を諦めるとのことなので、契約解除の意思表示を内容証明郵便により行うこととなった。
分譲会社が経営破綻し、物件の引渡が遅滞していたことが幸いした事例である。もし、遅滞なく引渡がなされていたら、本人はいずれ生活破綻する可能性が高かったであろう。



